ハリウッドで50年も前から、映画の機材商を営んでいる年老いた友人・ドンから聞いた話です。
【 このお話の転載等はご遠慮ください 】
若き日のドンが持っていた倉庫の横は、映画の撮影スタジオでした。
映画の機材商だから、スタジオの横が一番よい場所に決まってます。
スタジオには、有名無名の役者達が出入りしていました。
その中に、超有名俳優の、オーソン・ウェルズ氏がいたのだそうです。
(「市民ケーン」という映画史上最重要の名作を生み出した映画制作者でもあります)
巨漢の彼は、出番の無いときはスタジオの外に専用のアームチェアを置いてくつろいでいたのだそうです。ドンには、当時妹がいて、倉庫に遊びに来てはウェルズ氏に遊んでもらっていたのです。
悲しいことに、妹にはある病気がありました。
その病気が進行するにつれて、彼女は視力を失っていったそうです。
毎日、悪化するばかりの病状と、低下する視力に泣いている妹を元気づけてくれるウェルズ氏。
ある日突然、ウェルズ氏はドンに聞きました。
ウェルズ氏 「録音機あるだろ?ちょっと貸してくれ」
ドン 「何に使うんですか?」
ウェルズ氏 「いいから」
ドンは映画の機材商なので、レコーダーくらいいくらでも持っています。その中の一台と、マイクをセットで貸したそうです。
数日して、ウェルズ氏はテープをつめこんだ箱を脇に抱えて現れました。
その箱をドンに手渡して、
「妹にあげてくれ」
そのテープは、ウェルズ氏が自ら音読して、録音した子供向け小説だったのです。
病気で視力を失っていくドンの妹を思って、世界に名をとどろかせた大スターが自ら小説を音読して、録音してくれたのだそうです。妹が喜んだのなんのって、聞かなくても想像出来ます。おもいやりの深さに、書いているだけで涙があふれてきます。
その妹は、しばらくの後、永い眠りについた、と聞いています。
ところで、この話、何か聞いたことないですか?
子供用小説。
O.ウェルズ氏の音読。
ある英会話教材の元になった話のようです。
その音声がそのまま教材になったわけではないでしょうけど。
その英会話教材は、僕も中学生か高校生の頃使ったことがあります。
全く役に立ちませんでしたが。(__;)
新聞の一面に、バ~ンと広告を載せて、
怪しげなキャッチコピー
で売っている、ロングセラー教材の一つです。
あの、人を必要以上に煽る広告が新聞に載ったり、ネットの広告を見る度、僕はいつも、妹を思い出し涙を流しながら ウェルズ氏との思い出を語る老いた友人の姿を思い浮かべて、悲しい気持になるのです。
規模は全く異なる同業者ながら、頼むから、もう少し理性的な宣伝広告が出来ないものでしょうか。
それは、ウソみたいに簡単に英語が話せるようになるために作られた音声じゃないでしょう?
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