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傍線にまつわる切ない物語

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図書館で借りてきた450ページの本。読んでいたら、247ページに鉛筆で傍線が引いてありました。

図書館の本に鉛筆で線を引くなんて、というかすかないらだちはありますが、この線が引いてある言葉を見て今回は怒りがすっ飛びました。

『老犬に新しい芸は教えられない』

ここで傍線です。

なぜ?

なぜ、247ページまでおとなしく読んできて、

ここ で本の内容と全く関係のない言葉に線を引く!

何の重要性を感じたんだ??

ちなみにこの本は、中東のニューステレビ局“アルジャジーラ”に関する本で、この言葉はアルジャジーラのジャーナリスト、アル・オマリさんが言った言葉の一部。全く、微塵も重要なポイントではないのです。

年老いた犯人が、自分が最近物忘れが激しいことに悩んでいて、

「おお!そういう事か!」

と納得して傍線を引いたのか、または、自分の無気力な親父がウチでゴロゴロしているのをみてイライラした若者が、

「おお!そういう事か!」

と納得して傍線を引いたのか分かりませんけどね。

図書館の本を読んでいると、傍線の一本一本にその傍線犯人達の人生観が見えてくるようで、なんだか切なくなったり、笑えたりしますが、中には、

「うむむ、なんか切実そうだなぁ」
「何も解決できないけど、話だけでも聞こうか?」

と言ってあげたくなる傍線もあります。

先日読んでいたドメスティックバイオレンスの本にも傍線があって、詳しい文言は忘れちゃいましたが、

「被害を受けたときにどうするか」

という部分でした。確か、街にはこれこれの施設や窓口がありますというところ。

これってとても危急のことではないですか?
この人にとって。

少なくとも傍線犯人はこの部分の記述に救われたわけです。

「ああ、そうすればいいのか・・・」

と力なく思って、ストレスで記憶力がさえないから傍線しておこうと思ったのかなと。

なぜか悲壮感に充ち満ちた湿っぽい話になっていきます。
他人の本に傍線を引く行為自体、いつものクセの延長程度のことなんでしょうけど、僕は結構悲劇も好きなのです。(笑)

自分も悩みは多いけど、少なくとも他人の悩みのタネになることだけはないようにしたいものです。

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