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食べ物の好き嫌いと別れと人生

息子が卒園した夜に、「先生はそっぴくんのこと忘れちゃうのかな?」 と泣いたとき、こんなことを考えました。

僕は息子に好き嫌いを許しません。
もちろん特殊なものではなく、一般的に食べられる物、言ってみればスーパーで普通に手に入るものに限ります。

これは、健康を考えてだけの理由ではありません。

味は、舌で感じます。
味覚です。
味覚は、人間にとってとても大切な感覚です。

子育て中の方で、

音楽をやらせて5感を鍛える

なんて言う人がいますが、

音楽で味覚が鍛えられますか?(笑)

小さな頃から音楽をやらせているのにもかかわらず、好き嫌いが多い子だとしたら

味覚がすっぽ抜けてます

こういうことって、とても多いと思いませんか?
感覚を鍛えるためにはどうすればいいのか。

視覚  美しいモノを見ることで、美感を鍛える
聴覚  様々な音を意識的に聴くことで鍛える
触覚  色々なモノを触って、質感を通して鍛える
嗅覚  色々なにおいをかぐことで鍛える
味覚  色々なモノを食べることで鍛える

こういう話をしていると、なんとなく不完全な気がしてきます。

なぜか?

それは、完全調和が “美” だけで成立しているかのような説明だからです。
臭い物にはフタをしろ、か。
それで良いはずはありません。

明 に対して 暗

何にでも、相反するものがあって初めて 完全調和 が成立します。つまり、

視覚  美しいモノを見ると同時に、美しくないモノも見た方がいい
聴覚  美しい音楽を聴くと同時に、美しくない音楽も聴くべき
触覚  上質なものを体感すると同時に、質の悪いモノも体感しておくべき
嗅覚  良い匂いと同時に、“臭い” も体感するべき
 (映画「パフューム」だな)

味覚  美味い物だけじゃなく、新しい味を体験し続ける

味覚だけ離したのは、他の感覚と少し違う感覚だという印象を持っているからです。
テイストアバージョンといって、食べてはいけないモノを吐き出すような本能が動物にはあります。
味覚というのは、地味ながら命を守ることに直結した感覚なのです。
だから、「美味い物と不味いモノ」 という対比だけで表現しようとするのが難しい。

世界には二面性があります。
本気で五感を鍛えるなら、その二面性を知らなければならないはず。
美しい音楽だけを聴いて、美しいモノだけを見て、上質なものにかこまれて、不快な臭いは全て排除して・・・

とってもお金持ちの香りです。(笑)

挙げ句の果てに、

嫌いなモノ(不快な刺激)も排除する、つまり好き嫌いを許す

ということでは、とても五感が鋭い子に育てるとは言えないのではないかと、僕は思うのです。
出会いがあれば、別れがあるし、ケンカもすれば仲直りもする、不味いものもあれば、美味い物もある。
クラシックがあれば、ヘヴィーメタルもある。
勝ちがあれば、負けがある。
ウソがあれば、本当がある。

全てが現実の刺激です。

家庭の文化によって、つまり親が子供に伝えたいことによって、何に価値を置くかは変わってきます。
普遍的なものではありません。

僕はヘヴィーメタルを美しいと思うし、クラシックも好きだけど、そうじゃない家庭もある。

我が家の文化は、僕と妻の価値観で出来ていくわけで、それが正しいとか間違っているという問題ではありません。
ただ、今の世の中のように、何でも選べる、不快感を排除することが容易な環境では、現実の二面性は忘れられてしまいますから、

間違いなく五感はどんどん退化します。

かけっこで順位をつけること、嫌いな子の存在、たまにウソが潤滑油になること、苦手な食べ物を美味しいという人がいること、トイレが水洗じゃないこと、水道水が飲めないこと、家のない人がいること、野生動物のかわいい赤ちゃんが “エサ” として狩られること、戦争ではお互いが敵であること、ジャンクフードも捨てたもんじゃないこと、高級なキャビアが実はそんなに美味くないこと、フォアグラが実は病気状態の肝臓と変わらないこと、エコがビジネスの道具でもあること。

きりがない。

野菜が嫌いだけど食べてみることは、苦しいことの裏に喜びが待っているという想像力に繋がると考えるのは変なのかな?

そっぴくんの先生は、そっぴくんのことを忘れちゃうけど、そっぴくんも先生のことを忘れちゃうんです。
でも、たまに思い出して生きていくんです。

別れが辛いのは、自分が相手を忘れちゃうかもしれないという不安だ

って言ったのは誰だったかな。

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