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派手になった同級生と日本

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同窓会に出席して、学生の頃とは打ってかわって派手になった子がいます。

ちょっとワルぶってみたり、考え方が極端になったり。口を開くと「垢抜けたって言われる」と自分で言ってるのです。必死になって、過去の暗かった目立たなかった自分が仮の姿で、今の派手な姿が真実なのだと、僕に対して訴えているような不自然さがあります。

学校という枠や、校則、先生という抑止力、そういったものが無くなったところで、それまで密かにもっていた変身願望を爆発させてしまったようです。

一方で、抑止力がある仕組みの中に馴染まなかった人達が“不良”と言われていたのですが、僕の知っている不良扱いされていた同級生は、良いお母さんになっていますし、子だくさんのお父さんになったヤツもいます。

今の日本の社会は、派手になった同級生に似ています。
みんなで虚栄心を張り合って、とにかく特別な存在になりたい人がいっぱい。

VIPだとか、セレブだとかに憧れる人が増えて、

セレブ講座

なんてのもある。品位を教えてもらうのではなくて、いかに振る舞ったら

金持ち“そう”に見えるか?

血眼になって競争しています。

セレブという言葉は成金趣味に近いです。
援助交際とか、消費者金融とか、婚外恋愛とか、本性を煙に巻く言葉の一つです。

挙げ句の果てに、自分の子供まで自分の虚栄心を満たす道具に見立てて、少しでも

見栄えのいいこと

を習わせようと躍起になっている雰囲気も感じられます。

「金、金」

ということは汚いことだと思われていました。

もちろん、心の奥底では誰もがお金が欲しいと思っている。
でも、その心には蓋がされて、鍵がかかっていました。

欲望はパンドラの箱のようなものです。

人間が心の底に持っている欲望が太陽の下で市民権を得て、堂々と競争を始めるほど社会にとって危険なものはありません。

あることは分かっている。
でも、解放してはいけない。

そんなそれぞれの人の気持ちが、

良識

として、世の中に程よくブレーキをかけていたんです。
外国には宗教と良識の二段構えのブレーキがありますが、日本には一つしかありません。

そのブレーキも大きく壊れつつあります。

よくあるのは高校生が親に隠れてタバコを吸ってたけど、見つかってしまってから隠すのが面倒になって、なし崩しなったとか、不倫してたんだけど、バレてしまって開き直ってしまうとか。

人間の欲望ってのは、一度解き放ったら元の箱に収めるのはほぼ不可能に近い。
元に戻すのが面倒くさくなって、

まあいいや

と妥協をはじめる。

放っておいた方が楽

ただそれだけの理由です。
欲望に任せて生きていく方が、なんとなく楽にみえます。
人の悲しみや、迷惑、元の自分の良さを捨ててしまっても、ほんの一時、自由を味わうことが出来ます。

だれがわざわざ苦しいことに挑みますか。
いつ結果が出るか分からないことを、毎日続けますか。
罪悪感を持ちつつも、元に戻す努力は辛いです。
だから一歩を踏み出せないのです。
そしてずるずると妥協を重ねる。

すると、そんな風潮を読み取ったメディアが、

「それでいいんだよ。自分に正直に生きましょうよ!」
「ありのままのあなたで良いんです!」

と煽ったり、許したりしてしまう。
挙げ句の果てに、テレビ番組などでそんな欲望を競争させて、少しでも目立つために、

「私の方がもっと煩悩的!」
「自分流。絶対譲れない!」(これが常に悪いわけではないですが)

と暴走し始めます。

人の意志はとても弱いので、テレビで極端な欲望合戦を始めると、

「あれよりはマシ」

と安心してしまう。
許されるライン(良識の)がどんどん下がってしまいます。

そしてそのまま大人になり、親になり、子供を“教育”するようになる。

僕は、大人はもっと意地をはらなければならない、と考えています。

子供は本能的な欲求全開の存在です。
欲求は、大人になる前に操縦を覚えなければならない感情です。
それを方法を教えるのは、親の責任です。

教える者が持たない技術を、どうやって人に伝えますか?

それが今、日本が進んでいる道です。
そっちへ進むな!と言っていた人が不正をする世の中になりましたが、だからといって総崩れになる必要はありません。

社会を変えようとせず、まず自分から変えようと思います。

こんな記事もあります。

Everything That Glitters Is Not Gold on October 30th, 2009

性能至上主義 on June 2nd, 2007

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